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by majilife

911の記憶、日本はテロの舞台になるか?

ニューヨーク貿易センタービルにジェット機が突っ込んだ時、私はミッドタウンの3番街を、オフィスに向かって歩いていた。

いつもより遅く部屋を出たので、遅刻が気になっていた私は街の様子がおかしい事に気づいていなかった。ただでさえ遅れているのに銀行に用事もあったので、周りを気にする余裕は無かったのだ。

と、突然後ろから肩を叩かれた。

「ワートレにジェット機が突っ込んだ!」
(註:ワートレとはワールドトレードセンターの略)

会社の同僚だった。今思えばその笑顔に狂気じみたものが含まれていたのだが、日頃から冗談好きな彼の言葉だけに、全く信じられなかった。





というよりも、貿易センタービルにジェット機が突っ込むなどという状況をとっさに想像しろというのが無理な話だ。それに、そんな大事件が起きているのなら、もっと街には喧噪があふれているはずだと思った。

同僚の冗談につきあっている暇はないと思い、銀行へ急いだ。そして、そこで信じられない光景を目にしたのだった。

銀行の中に据え付けてあるテレビの前に人だかりが出来ている。アナウンサーのヒステリックな声が流れ、画面の中ではジェット機がビルに突っ込むシーンがリプレイされていた。

人は想像を絶する事態が起きてしまうと、騒ぐよりもむしろ黙り込んだり座り込んだりしてしまうのだという事をこの時に学んだ。

誰もが信じられない光景を受け入れられなくて呆然としていたのだ。

「ハリウッド映画みたいだ……。」

そんな罰当たりな事を思っていると、急に画面の中のビルが崩れ始めた。

銀行の中で客だけでなく行員までもが「Oh……」と、低く声を上げた。

誰もが呆然とする中、ふと気がつくと野次馬たちの中から中東系の人々が消えていた。これから中東系というだけで、受けるであろう迫害に怯えてその場を立ち去ったのだ。

ふと我に返った私は、会社へと急いだ。取引先には貿易センタービルの企業も多い、同僚の何人かが巻き添えになっている可能性もある。

「関連するプロジェクトに配属されてるのは誰だっけ?」

初めて自分の身近な出来事という実感が湧き、無事を祈った。

テレビの中の出来事は、自分が今居る場所からほんの数キロの場所で現実に起きているのに、どことなく現実感が無い。

「そういえば、アイツ、今日はダンスのリハーサルでワートレの近くに居るんじゃなかったっけ?」

当時の恋人が巻き込まれているかもしれないと気づいた頃には、もう携帯電話は麻痺していた。連絡が取れないまま、不安な時間がただ過ぎて行く。

昼過ぎになると、現場から歩いて逃げてきた人々がミッドタウンの道路を埋め尽くした。煤で真っ黒になった人たちの目つきは尋常なものではなく、さらにアップタウンの方角へと物凄い形相で歩いて行く。

まるで現実感の無い奇妙な感覚のままでその日は過ぎて行った。

幸い同僚たちの中に巻き添えとなった者はなく、恋人がリハーサルを行っていた場所は少し壊れたのだが、彼女に怪我は無く、その日は興奮気味に事件を語りながらの夕食となった。傍目から見れば、罰当たりな行動に見えただろうが、そうやってハイな状態を保っていないと現実の異常さに押し流されてしまいそうで、誰もがそうやってささやかな抵抗を試みていたのだ。

今、日本に居て、あの時の事を思い出している。

もしも日本で同じようなテロが行われるとしたら?

幸いな事にその可能性は低いだろう。なぜなら日本という国は自分の立場をはっきりさせずに来ている為に、その経済力に比べて、政治的、イデオロギー的には世界から注目されていないからだ。

正直、アメリカに住んでいた時に感じたのは、日本なんて別に仲間でもなんでもないし、どうなろうと気にならないといった空気だった。日本人が考えている程には、日本という国は世界に認知されていないのだ。

だから、日本でテロを行ったところで、ヨーロッパ世界にもアメリカ社会にも打撃を加えた事にはならない。

もちろん安心しきってしまうワケには行かないが、日本での大規模なテロはテロリスト達にとって意味のあるものにはなりにくいだろう。

それよりも気になるのは海外で活動している日本人や日本の組織である。特にサマワに派遣されている自衛隊に対するテロはあり得る。

日本のどこかの都市でテロが発生しても、欧米の人々の多くは身近な事とは感じない。しかし、派兵されている自衛隊がテロに遭った場合には、「派兵されている」という共通項から、自国が派兵した同胞に胸を痛めるだろうから、テロを行う理由としては十分な条件となる。

先に述べた通り、己の立場をはっきりさせない事によって、日本は比較的安全な立場を手に入れているのだが、サマワに派兵されている自衛隊に犠牲者が出た場合には、日本はその立場をはっきりと世界に示さなくてはならなくなるだろう。

その時、日本はどんな立場を選択するのか、それを考えておかなければならない時期が来ている。
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by majilife | 2005-08-06 05:31 | 満腹の科学